研究期間:2014年4月〜2018年3月
研究代表者:古川雄一(中京大学)
研究成果(2017年度):
Inflation and Economic Growth in a Schumpeterian Model with Endogenous Entry of Heterogeneous Firms (with Angus C. Chu, Guido Cozzi, and Chih-Hsing Liao), European Economic Review 98, 392–409, September 2017.
研究成果(2016年, 2017年度):
金融政策が経済成長に与える影響について、企業の自発的な参入・退出を通じた効果に注目した。新たな研究を行った。参入コストがゼロの場合は、名目利子率の上昇は、研究開発(R&D)活動を減少させ、イノベーション率や経済成長率の減少をもたらす。この結果は、既存研究と同じである。しかし、企業の参入コストが存在する場合、名目利子率の上昇は、実際に市場に出回るイノベーションの質の分布に影響を与える。そのようなチャネルを通じて、名目利子率の上昇は、経済成長率に逆U字型の効果を持つ可能性がある。つまり、経済成長率を最大化するような名目利子率が存在する可能性がある。さらに、アメリカ経済をターゲットにしたカリブレーション分析を行い、定量的に、経済成長率を最大にするインフレ率は、約3%である可能性を指摘した。これは、最近の実証研究と整合的である。この研究成果は、ディスカッション・ペーパーとして公表されている。この研究に加えて、本研究計画に新たなる発展をもたらすような、いくつかの論文を執筆、ディスカッションペーパーとして公開した。
以上の研究成果は、所期の計画通り、国際研究協力に基づいて進行している。具体的には、Angus Chu 教授(復旦大学)、Guido Cozzi 教授(ザンクトガレン大学)、 Chih-Hsing Liao(中国文化大学)、Antonio Neto (OECD, Lisbon)、Ana Paula Ribeiro(ポルト大学)との共同研究を行ってきた。
関連した公刊論文:
Growth and Cultural Preference for Education in China (with Angus C. Chu and Dongming Zhu), Journal of Macroeconomics 49, 192–202, September 2016.
Unions, Innovation, and Cross-Country Wage Inequality (with Angus C. Chu and Guido Cozzi), Journal of Economic Dynamics and Control 64, 104–118, 2016.
Patents, R&D Subsidies and Endogenous Market Structure in a Schumpeterian Economy (withAngus C. Chu and Lei Ji), Southern Economic Journal 82, 809–825, 2016.
研究成果(2015年):
○グローバルな研究コラボレーション
研究プロジェクトは、所期の通り、国際研究協力に基づく共同研究として進行している。具体的には、Angus Chu 教授(Liverpool 大学)、Guido Cozzi 教授(University of St. Gallen)、Lei Ji 助教授(OFCE-SciencesPo/SKEMA Business School)、Dongming Zhu 准教授 (Shanghai University of Finance and Economics) との共同研究を行ってきた。
○研究の概要
金融政策が経済成長に与える影響について、昨年度までに行った定性・定量分析をもとに、研究活動を発展させた。具体的には、ディスカッション・ペーパー (Chu, Cozzi, and Furukawa 2015) にまとめた成果をセミナー報告で周知するとともに、国際的に定評あるジャーナルに投稿した。加えて、経済成長モデルの文脈において、「金融政策が、重要なマクロ・ミクロ経済要因に対してどのような役割を果たすか」を明らかにするために、分析のベースとなる理論モデルを構築した。対象とする要因は、たとえば、労働組合、賃金格差、技術リーダーシップ、教育投資、特許、オフショアリング、文化的な選好 等が含まれる。いくつかの研究成果は、公刊されたか (e.g., Chu, Cozzi, and Furukawa 2015a, Furukawa 2015)、ディスカッション・ペーパーとして公表されている (e.g., Chu, Cozzi, and Furukawa 2015b)。
研究成果の詳細については、ここを参照せよ。
関連した公刊論文
研究成果(2014年):
金融政策が経済成長に与える影響について、定性・定量の両面から分析を進めた。特に、金融政策によってインフレーションが引き起
こされた時、失業率や経済成長率がどのように変化しうるのかについて、詳細な分析を試みた。本研究の重要性は、定性的には、金融
政策や失業と経済成長の関係という伝統的な研究テーマに対して、新しい視点(研究開発投資の cash-in-advance 制約)から理論モ
デルを開発したことにある。また、適切な手法でモデル・カリブレーションを行い定量分析を行った点も新しく、重要な貢献であると
考える。詳細は次の通り。
(定性)金融政策やインフレーションが長期的な失業率と経済成長率に与える影響を分析するために、いわゆる cash-in-advance (CI
A) 制約と労働市場のマッチングを考慮した理論モデルを開発した。開発された理論モデルを利用して、インフレーションと失業の長
期的関係が cash-in-advance 制約の性質に大きく依存する可能性が示された。消費の CIA 制約の下では、金融政策によるインフレー
ションは失業を減らし、研究開発投資の際の CIA 制約の下では、インフレーションは失業を増加させる。
(定量)このモデルをアメリカとEUのデータをつかってカリブレートして、インフレーションと失業の関係に関する定量的な結果を示
した。
なお、本研究は Angus Chu 教授(リバプール大学、イギリス)と Guido Cozzi 教授(ザンクトガレン大学、スイス)との共同研究で、ディスカッション・ペーパー(MPRA Paper 61175)としてまとめられている。